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国立能楽堂二十周年大改装
能舞台を守る男たち TEXT:新城 健一 2004.04.24(取材日2003.09.02)

■国立能楽堂のコンディション


――:改修を終えた舞台はいかがですか?

荒井:柱がなじんできて、いい状態。生きてるんだな、と思いますね。

――:なじんできた感じとは?

荒井:やっぱり、木が暴れるんですよ。湿気で伸び縮みがある。それを「暴れる」と言っていま す。季節ごとに、変わるんです。それで、木と木がせると……

――:せる?

荒井:ああ、木と木がくっつくと、きしむ音がするんです。だから、詰め物をする。詰め物は、木 と木を少し離すために、木片やフェルトなどを舞台下から板の間に挟み込むんです。何百箇所もやって ますよ。まさに縁の下の力持ちですね。5年前に改修したときに、舞台の木がかなり柔らかくなりました。 大工さんや職人さんが、いろいろな調整をやってくださっていますから、今一番いい状態ですね。



――:舞台は生き物ですね。常に変わっていくんですね。

荒井:本当にね。

――:この木はどこから?

荒井:備州の特等ヒノキですね。これだけの太さのものを取るのはもう難しいかもしれない。舞 台の板は、幅が44センチで、3間の長さ。そういう立派な木が少ないんですよ。

――:植樹などもしているんですよね?

荒井:していますけどね。育つまでは大変ですよ。舞台の上には、長刀や刀の傷があるんで す。能楽師が気持ち良さそうに刀などをバーンと投げるけど、「あーまた傷ついたー」と気をもむんだよ 。ははは。素晴らしい公演になるなら、いいんだけどね。
道成寺の鐘も、いくら竹製とはいえ、40キロにもなるからね。昔は80キロくらいのものもあったよ。だから、 落ちてくると、舞台の上に丸い跡がつくんです。だけどね、軽すぎると、バウンドするから鐘らしくない。 ちょうどいい重さは何キロなんだろうね。
まあ、そのくらい舞台が可愛くなってくるんですよ。だから、精魂込めて手入れをするんです。能楽師の 方々が気持ちよく舞えるように、お客さんが心地よく能楽を楽しめるように、舞台の面倒を見つづけます 。



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