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能楽シークレットライブ!
『茜浜 能楽囃子ミニコンサート』を観て TEXT:新城 健一 2004.09.06

TOPICS

能楽シークレットライブ
ソロ
一調一管
終演後
番組表


■ソロ

シークレットライブは、一噌さんのソロから始まりました。

能楽囃子シークレットライブ。一噌幸弘の能管と大川典良の太鼓のセッション
闇の中で響く一噌さんの笛の音。両手でそれぞれ一本ずつの笛を持ち、一息で両方の笛を鳴らしながら、指先で別々の音を奏でる。

一噌さんは、能管のみならず、様々な笛に精通された方で、異なる音楽ジャンルの方々とコラボレーションやセッションを行なっておられます。また、かつて日本に存在していたとされる「田楽笛」を新たに考案し、その奏法を復活させた実績を持っています。
このシークレットライブでは、そうした活動の中から、一噌さんのオリジナル曲が披露されました。

重要無形文化財総合指定保持者、という肩書きは、とても堅苦しいイメージがありますが、そうした考えを吹き飛ばすような、エンターテインメント性たっぷりのソロステージ。
二本の笛を同時に吹き鳴らす奏法に会場は驚嘆の声を上げ、曲の合間の駄洒落交じりの話に笑いが起こっていました。

次に、大川さんのソロとなりました。

能楽の太鼓がどのようなものか、という説明にはじまり、実際の能舞台と同じ演目を、厳粛なる雰囲気で奏でられました。
それは、若手能楽師として研鑚を重ねる大川さんの真面目な姿勢が伝わってくる舞台となりました。

能楽囃子シークレットライブ。一噌幸弘の能管と大川典良の太鼓のセッション
太鼓の赤いしめ縄が闇に浮かび、きりりとした姿勢で叩く姿がかすかに見える。能の太鼓は、音と共に、その姿勢や振る舞いも大切なものとされているそうです。

■一調一管

能楽囃子シークレットライブ。一噌幸弘の能管と大川典良の太鼓のセッション
かがり火によって、朧に浮かぶ一噌さん(手前)と大川さん(奥)。

笛と太鼓のセッションを、能楽用語では「一調一管(いっちょういっかん)」と呼びます。
「一調」は打楽器を表わし、小鼓、大鼓、太鼓などを意味します。
「一管」は笛を意味します。これは、和楽器に限ったことではなく、フルートなどの洋楽器でも、笛は「管楽器」と呼ばれます。

闇夜に響く太鼓の音。そして、笛の音。
見上げると、足早に流れる夜の雲の狭間に、星が瞬いていました。
かつて、時の権力者たちが、楽しんだ能の世界。当時は、このように野外にて、かがり火の灯火に照らされた空間で、生と死の狭間で蠢く者たちの物語を楽しんだのでしょう。

■終演後

一調一管で会場は一気に能楽の世界に包まれました。
終演後、和楽器に興味を持つ高校生らが集まってきました。

能楽囃子シークレットライブ。一噌幸弘の能管と大川典良の太鼓のセッション
高木哲哉さん(右)、吉岡恵美さん(中)、古宮裕香里さん(左)。「部活動の説明会で和太鼓を叩いている姿を見て、文科系というよりも運動部のような雰囲気に興味を持った」という。現在は、部活動で和太鼓を練習している。「能楽を見るのは始めてで、とてもいい体験になりました」「声が面白い」「姿勢がいい」「能は固いイメージ。でも、観てみたいと思った」とのこと。

彼らは、千葉県立八千代高等学校の鼓組(部活動)に所属しているそうです。いつも叩いている太鼓とは違う、能の太鼓を恐る恐る叩きながらも、その感触を楽しんでいたようです。
また、普段は篠笛の練習をすることがあるそうで、一噌さんに「一緒に吹こう」と誘われ、緊張しながらも、高校生と重要無形文化財総合指定保持者のセッションが実現しました。

時を越えて伝えられる和の音楽が、年齢も立場も超えて、人と人とを結びつける。 シークレットライブならではのハプニングが、とても刺激的なイベントでした。

能楽囃子シークレットライブ。一噌幸弘の能管と大川典良の太鼓のセッション
重要無形文化財総合指定保持者である一噌幸弘さんと高校生のセッション。未来を担う若者を相手に、一噌さんのアドリブが冴える。三人の高校生は、2004年8月28日に、東葉高速線・八千代緑ヶ丘駅前にて開催された『東葉サマーコンサート』にて、鼓組(こたいぐみ)の演奏に参加。今後も活躍してほしい。

次のページでは、シークレットライブの番組表(演奏曲目)を紹介します。

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