翁(おきな)
下あごが別のパーツで作られ、口の端にある紐で結ばれている、極めて特殊な面です。
額や頬などに丸みを帯びたしわが刻まれ、その皺の曲線に連なるように、目を細めて笑っています。
これは、神の化身。
『翁(おきな)』という演目専用の面です。
その内容は、ただただ世のめでたさを祝う、というものです。
もともと神事に近い演目で、演技や演出の入り込む余地のない、形式として崇高なものとされています
。
現在では、新年や新しい能楽堂の柿落としなどに舞うことがあるようです。
神事に近いという証に、『翁』を舞う能楽師は、「別火(べっか)」と言って、女との接触を数日間禁ずる
儀式を行います。
現代の日本において、異性と寝食を完全に分けることは難しいのですが、「別火」の本質を「日常から
離れること」と解釈すれば、自分を別の状態に持っていくための現代生活において可能な儀式というも
のがあるのかもしれません。
代表的な使用演目
翁(おきな)
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