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能の雑学・豆知識 TEXT:新城 健一 2004.04.24

TOPICS

日本の伝統芸能としての能
ミュージカルとしての能
1回しか公演しない能
日本のことばとしての能
仮面劇としての能
舞台装置からみる能


【日本の伝統芸能としての能】

600年ほど前に、神に奉納する一般の人々の間で流行していた『申楽(さるがく)』や『田楽(でんがく)』 をベースに作られた、いわば日本オリジナルのミュージカルです。

美男子として有名だった世阿弥(ぜあみ)さん、その父親の観阿弥(かんあみ)さん が、当時の権力者に気に入られ、国の重要な宴会で舞台を催すことが多くなり、権力階級の間で流行 していきました。

その後、芸術作品として価値を認められつつ、戦乱の時代に衰退することがありながらも、絶えることな く現代まで受け継がれ、伝統的な芸能となりました。

そして、世界にその存在を認められ、2001年に世界無形遺産 の第一号として認定されました。


【ミュージカルとしての能】

能舞台には、役者の他に、音楽を奏でる役割の人々が登場します。囃子方(はやしかた)と 呼ばれる楽器担当者と、地謡(じうたい)と呼ばれるコーラスです。囃子方には、笛、小鼓(こ つづみ)、大鼓(おおつづみ/おおかわ)、太鼓の四人がいます。地謡は、8人から10人のグループで す。

ひな祭りに飾る雛人形に、五人囃子というものがあります。実は、この五人囃子が、能の囃子 方と地謡なのです。五人囃子の人形をよく見ると、笛、小鼓、大鼓、太鼓を持っています。そして、最後 の一人は、扇子を持っています。この扇子を持っている人形が地謡なのです。


←この扇は、仕舞用のもので、地謡のものではありませ ん。




こうした音楽担当者をバックに、役者たちのセリフは全て唄となっています。
楽器とコーラスに合わせて、唄いながら舞う。
日本オリジナルのミュージカルと考えられるゆえんです。


【1回しか公演しない能】

ブロードウェイのミュージカルなどは人気があれば「ロングラン」となります。そのように、何回も何回も、 何年にも渡って公演し続けることが、その舞台が上質で人気のあるものだという証となっています。

しかし、能は、連日くり返し公演することはありません。

シテ方(主役&興行主)、ワキ方(脇役)、囃子方(楽器担当)、地謡(コーラス)など、別個に練習を重 ね、「申し合わせ」と呼ばれるリハーサルを一度だけ行います。そして、本番は、一日限りです 。

舞台とは、能楽師(シテ方、ワキ方、囃子方、地謡、狂言方など能舞台に携わる人々全て)と見所(け んしょ=客席のこと)にいるお客さんが、一緒に作り上げる時間と空間で構成されるものです。

くり返し行なうものではなく、一度きりだからこその緊張感があり、それを大切にしているのかもしれませ ん。

一期一会という考え方に根ざしているのかもしれません。

ですから、見逃してしまった演目を、同じ能楽師で見るためには、何年も待たなければならないのです 。


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